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知財業界で働く人のリアルな1日
「知財業界って何してるの?」「特許の仕事って難しそう…」
そんな疑問を持つ学生の皆さんに向けて、知財業界で実際に働く23人の方々にアンケートを実施しました。企業の知財部門、特許事務所、スタートアップなど、さまざまな立場から見た知財業界のリアルをお届けします。
23人に聞いたスケジュールと働き方
GrIPでは、実際に知財業界で働く方を対象に1日のスケジュールについてアンケートを実施しました。
答えてくれたのは、企業の知財部門で働く14名、特許事務所の7名、そしてスタートアップ・個人事業の1名。経験年数は若手からベテランまで幅広く、勤務形態も出社中心が9名、リモート中心が7名、ハイブリッドが6名と、多様な働き方が見えてきました。まずはその中から、5名の実際のスケジュールをご紹介します。
知財業界の1日ってどんな感じ?
【企業知財部門】Aさんの1日(中堅・出社中心)
7:00~7:30
出社、メールチェック、知財ニュースチェック
7:30~9:00
メール対応
9:00~13:00
研究進捗会議、知財部会議など
13:00~16:00
発明発掘会議、中間対応打ち合わせ、事務所打ち合わせ
16:00~20:00
出願明細書チェック、中間対応検討
20:00
退社
Aさん上司、会社次第ですね。事務所経験もありますが、企業知財の方が両立はしやすい気がします。
【企業知財】Bさんの1日(中堅・リモート中心)
9:00~10:00
業務開始、メール等チェック
10:00~12:00
発明相談
12:00~13:00
昼休み
13:00~14:00
発明相談
14:00~16:00
明細書、中間処理等の対応
16:00~17:00
他社リスク調査関連
17:00~18:00
経営向け資料作成、議論等
18:00~19:00
残務チェック、翌日の前捌き
19:00
退社



フルリモートだとそこの境目は限りなく希薄になると思います。ただ、それが悪いことだとはあまり思っていません。仕事をしたいときにして、プライベートを重視したいときには重視すればいいかなと考えています。
【企業知財】Cさんの1日(中堅・ハイブリッド)
8:00~9:00
出社・メールチェック
9:00~11:30
プロジェクト会議
11:30~12:30
ランチ
12:30~13:00
メール処理
13:00~14:00
出願方針会議
14:00~15:00
資料作成。契約書・明細書等レビュー
15:00~17:00
調査業務
17:00
退社



保育園児がいるフルタイムワーママです。在宅制度とフレックス制度もあるので、子育てとの両立はしやすいです。定時よりも1時間早めで勤務していることが多いです。
【特許事務所】Dさんの1日(若手・出社中心)
9:00~10:00
出勤・メール等チェック
10:00~12:00
打ち合わせ(国内国外出願系・中間系何の作業するかはその日次第)
12:00~14:30頃のいずれか
昼休憩
17:30~19:00
打ち合わせ(国内国外出願系・中間系何の作業するかはその日次第)
17:30~19:00
退勤
夕食後
当日マスト作業残ってたら夕飯後にリモート作業



時間に余裕があれば好きにできるので両立しやすいし業務のモチベーションも維持しやすい。
【企業知財】Eさんの1日(ベテラン・管理職)
8:30~9:30
出社、メール
9:30~11:30
部内幹部会議
13:30~16:30
部内または部外と個別特許案件相談
16:30~18:30
メール、資料作成など
18:30
退社



仕事の裁量部分が大きいので両立はしやすい
アンケートで見えた実態と傾向
ここからは、皆様から頂いたアンケート結果から、それぞれの質問で多かった回答をご紹介します。
知財業界の人って、どんな仕事に時間を使ってるの?
1位―出願書類・明細書作成
これは特許や商標などの出願書類を作成する業務で、技術内容を理解し、法律的に適切な形で文章化するスキルが求められます。研究者が生み出した発明を、特許という権利として守るための最初のステップです。
2位―審査対応(中間処理)
特許庁から審査結果が届いたら、それに対して意見書や補正書を作成します。ここでの戦略的な対応次第で、特許が取れるかどうかが決まることもあるので、知財担当者の腕の見せ所です。
3位―発明発掘・ヒアリング
研究者や開発者から新しい発明をヒアリングし、特許として出願すべきかを判断します。技術の価値を見極め、企業の知財戦略に沿った判断をする、コミュニケーション能力が活きる場面です。
その他の回答
- 他社特許の調査や自社技術の特許性を調べる「特許調査」
- 会社全体の知財戦略を考える「ポートフォリオ管理」
- ライセンス契約の交渉を行う「契約関連業務」
- 社内の知財意識を高める「教育・啓発活動」 など
知財の仕事を効率よくこなすために実践している工夫
タスクや案件ごとの優先順位づけを明確にする
複数の案件を同時進行するのが当たり前の知財業界では、何を優先すべきか判断する力が重要です。Googleカレンダー、Notion、Todoistといったスケジュール管理ツールを活用したり、タスクボードやスプレッドシートで進捗を可視化したりする人が多いようです。
発明者・担当部署とのコミュニケーションを密に取る
技術を正確に理解し、発明者の意図を汲み取るには、やはり対話が欠かせません。TeamsやSlackでナレッジを共有しながら、チーム全体で情報をキャッチアップする文化も根付いているようです。
生成AIや自動化ツールを使って効率化している
知財業界でもDXがどんどん進んでいます。ルーチン業務をテンプレート化したり、AIを使って文書作成をサポートしたりと、テクノロジーを積極的に取り入れる姿勢が見られました。
その他の回答
- 集中できる時間帯に難易度の高い業務を配置している
- 時間をブロック化して集中作業の時間を確保している
- 実務経験ゼロの部長からのゴミのような仕事を全力で断る
メリハリをつけた働き方を実践している方の他、プロフェッショナルとしての矜持を大切にされている方もいました。
本質的な価値を生む仕事に集中することが大切です。
知財業界の働き方:プライベートとの両立は?
知財業界は比較的プライベートとの両立がしやすいと感じている人は多い
多くの回答者が、知財業界は比較的プライベートとの両立がしやすいと感じているようです。その理由として挙げられたのが、リモートワークやフレックス制度の充実、裁量労働で自分のペースで働けること、そして専門職としての裁量が大きいことでした。
特に印象的だったのは、子育てをしながら働く方々の声です。Cさんの「保育園児がいるフルタイムワーママです。在宅制度とフレックス制度もあるので、子育てとの両立はしやすいです」という回答の他、「フルリモートで裁量労働であるため、さらに柔軟に働けるので小さい子(1歳)を持つ身としてとても働きやすいです」という声もありました。
その他の回答
一方で、フルリモートで働くBさんからは「フルリモートだとそこ(プライベートと仕事)の境目は限りなく希薄になると思います。ただ、それが悪いことだとはあまり思っていません。仕事をしたいときにして、プライベートを重視したいときには重視すればいいかなと考えています。」との回答がありました。仕事とプライベートの境界線が曖昧になることを、むしろポジティブに捉えられているようです。
「事務所経営に近づくにつれプライベートはなくなるが、そういうものだと理解している。業務の遂行こそが生き甲斐である」という回答からは、経営や管理職になると、責任が増える分、プライベートの時間は減る傾向が伺えます。それでも、それを含めて仕事にやりがいを感じている方が多いのも、知財業界の特徴かもしれません。
「上司、会社次第ですね。事務所経験もありますが、企業知財の方が両立はしやすい気がします」という声もあり、企業か事務所か、どんな組織に所属するかで働き方は大きく変わるようです。
今後の理想の働き方は?
専門職としてスキルを深めたい:8名
知財のスペシャリストとして、専門性を高めていきたいという方が最も多い結果になりました。
技術と法律という専門性の高さが魅力なのかもしれません。
管理職・マネジメント志向:7名
組織を率いて、チームで成果を出したいという方も根強くいます。知財部門のマネジメントや、事務所経営に興味がある方もいるようです。専門職志向とマネジメント志向が拮抗している、興味深い結果です。
その他の回答
- 起業・独立
- 他職種・他業界への転換
- 複業
- 飽きるまで働いて飽きたらガーデンを整備してカフェをやる☕️🫖
- 専門職でありながらマネジメントも遂行していく知財オールラウンド人材?
- ゆるふわ
知財のスキルを活かして、多様なキャリアパスを描けることがわかります。
ユニークな回答も度々登場しつつ、知財以外も追求したいという意欲のある方、人生を楽しむ姿勢など様々な理想の形が垣間見えました。
まとめ:知財業界ってこんなところ
理系と文系、両方の要素に興味がある人にとって、知財業界はとても魅力的な選択肢だと思います。技術を理解し、それを法律の言葉で表現する仕事だからです。
また、コミュニケーションが好きな人にも向いています。発明者とのヒアリング、事務所との調整、経営層への報告など、対話の場面が多く存在します。
論理的思考が得意な人なら、複雑な技術を整理し、戦略的に権利化を進める業務にやりがいを感じられるでしょう。そして、新しいテクノロジーに興味がある人には最高の環境かもしれません。AIやDXなど、最新技術を業務に取り入れる動きが活発です。
知財業界の魅力は、まず専門性の高さ。技術と法律という希少なスキルが身につきます。働き方の柔軟性も大きな魅力で、リモートワークやフレックスが充実しています。キャリアの選択肢も豊富で、企業、事務所、独立など、自分に合った道を選べます。比較的ワークライフバランスが取りやすいのも嬉しいポイントです。
そして何より、企業の技術戦略を支える重要なポジションとして、大きなやりがいを感じられる仕事です。
知財業界は、一見すると地味に見えるかもしれません。でも、企業の技術を守り、イノベーションを支える、とても重要でやりがいのある仕事です。
技術と法律の両方に興味がある、専門性の高い仕事がしたい、柔軟な働き方を実現したい。そんな学生の皆さんにとって、知財業界は魅力的な選択肢の一つになるかもしれません。
まずはインターンシップや説明会に参加して、実際に知財業界の雰囲気を感じてみてはいかがでしょうか?
この記事は、知財業界で働く23人の方々へのアンケート調査(2025年11月実施)をもとに作成しました。
ご協力いただいた皆様、ありがとうございました!
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