パルワールドとポケモンの「特許」を、AIに全部聞いてみた

『パルワールド』の正式版1.0がリリースされ、任天堂・ポケモン社との訴訟がまた話題になっています。

ただ、SNSで流れてくる話の多くは「キャラがポケモンに似ている」という話。実際に争われているのはそこではありません。争点は特許です。しかも、モンスターを捕まえる操作と、モンスターに乗って飛ぶ操作という、きわめて具体的なゲーム操作の仕組み。

では、その特許には何がどう書いてあるのか。気になったので、特許調査AIの PatSnap Eureka に片っ端から聞いてみました。以下、実際の画面をそのまま貼りながらのレポートです。

目次

前提:この訴訟は何を争っているのか

まず基本情報を整理します。

項目内容
提訴日2024年9月18日
裁判所東京地方裁判所
原告任天堂株式会社、株式会社ポケモン
被告株式会社ポケットペア
請求パルワールドの差止め+各500万円(計1,000万円)の損害賠償

注目すべきは請求額です。1,000万円。世界的ヒット作を巡る訴訟としては、明らかに金額が主目的ではありません。狙いは差止め、つまり「その仕組みを使わせない」ことにあると読むのが自然でしょう。

Eurekaに聞いてみた①:特許第7545191号の中身

まずは訴訟で名前が挙がる特許の1つ、特許第7545191号をそのまま投げてみました。返ってきたのがこちらです。

図1:質問は「特許第7545191号の内容は?」の一文だけ。書誌情報が表形式で返ってくる

  • 発明の名称:ゲームプログラム、ゲームシステム、ゲーム装置、およびゲーム処理方法
  • 出願日:2024年7月30日/登録日:2024年8月27日
  • 権利者:任天堂株式会社、株式会社ポケモン
  • 請求項数:全19項

出願から登録まで1か月弱。この速さは後で効いてきます。

続けて請求項の中身です。

図2:19の請求項を「プログラム/方法/システム/装置」の4カテゴリに分解して提示してくれる

技術内容を平たく言うと、「捕獲アイテムを投げるモード」と「戦闘キャラクターを繰り出すモード」を、同じ操作系で切り替えられる仕組みです。方向入力で照準を決め、ボタンで対象を選び、ボタンを離すと放つ。当たれば捕獲判定、あるいは戦闘開始。

面白いのは、Eurekaが拾ってきた先行技術文献です。引用されていたのは非特許文献「Catching Wild Pokemon」。従来はボール投げが戦闘中に限られ、フィールド上では投げられなかった——この課題を解決する構成として位置づけられています。つまり、ポケモン自身の従来仕様を先行技術として、そこからの改良として権利化されているわけです。

Eurekaに聞いてみた②:残り2件の特許

続けて関連特許も聞きました。

特許第7493117号(出願2024年2月26日/登録2024年5月22日/全24項)

捕獲アイテムの照準制御と、捕獲成功のしやすさを示す指標の表示が中核。フィールドキャラクターの残存体力などに応じて捕獲成功率が変わり、それが画面に出る、という部分まで請求項に入っています。

特許第7528390号(出願2024年3月5日/登録2024年7月26日/全16項)

こちらは搭乗系。地上用・水上用・空中用・崖面用の搭乗キャラクターを持っていて、プレイヤーが空中にいるときに操作すると、選択操作を挟まず即座に空中用の搭乗キャラに乗り換えられる。落下ダメージの回避が効果として書かれています。崖面だけは誤操作防止のため自動切替しない、という設計まで明細書に記載があります。

2件の関係を整理してもらったのがこちら。

図3:「両者の違いは?」と聞くだけで、パテントファミリーの重複関係まで踏み込んで比較してくれる

ゲームを遊んだことがある人なら、この3件が何を狙っているかは一目瞭然だと思います。

Eurekaに聞いてみた③:時系列がいちばんの争点

ここからが本題です。日付を並べ直してみてください。

  • 2021年12月22日:原出願の優先日
  • 2024年1月19日:パルワールド早期アクセス開始
  • 2024年2月26日 / 3月5日 / 7月30日:問題の3特許を出願
  • 2024年5月22日 / 7月26日 / 8月27日:それぞれ登録
  • 2024年9月18日:提訴

3件はいずれもパルワールド公開後に出願され、しかし分割出願であるため優先日は2021年に遡る。日本経済新聞はこれを「7カ月で3つの特許網」と表現しました(出典:日本経済新聞)。

制度上は完全に正規の手続きです。分割出願は親出願の開示範囲内でしか認められませんから、「後から見て書いた」わけではない。ただ、競合製品を見てから、その製品に当たるように請求項を仕立てて権利化する——この動きの速さと精度は、知財実務としては率直に言って見事です。同時に、ここが最大の批判点にもなっています。

Eurekaに聞いてみた④:ポケットペア側の反論

被告側の主張も聞いてみました。

図4:モンスターハンター4、ARK、艦これ、Craftopia、Pokémon GO——先行技術として提示されたタイトル一覧

反論の骨子は4つです。

  1. 先行技術による無効主張:モンスターハンター4(カプセル型捕獲)、ARK: Survival Evolved(捕獲・テイム)、艦隊これくしょん、自社の過去作Craftopia、Pokémon GO などを列挙
  2. 特許適格性への異議:争点特許は「ゲームルール」そのものであり技術的実体を欠く、との指摘
  3. 無効審判請求:特許庁へ正式に申立て
  4. 関連出願の拒絶査定:任天堂側の関連出願が「独創性が十分でない」として拒絶された事例が報じられている

図5:主張の種類ごとに整理した表。末尾の「証拠境界」で、何に基づき何に基づいていない回答かを自己申告している

さらに、任天堂側は2025年7月に特許第7528390号の訂正審判を請求し認められています(訂正2025-390051)。訴訟の途中でクレーム文言を直す動きで、無効主張への防御と分析されています(出典:弁理士法人シアラシア、2026年7月26日取得)。

いまどうなっているか(2026年7月時点)

  • 2024年11月〜2025年5月:ポケットペアが仕様変更(パルスフィア投げの削除、滑空をグライダーに置き換え)
  • 2025年11月:原告が請求範囲を仕様変更前の旧バージョンに限定
  • 2026年4月:米国特許庁が関連特許の26請求項をすべて拒絶と報道
  • 2026年10月1日:証拠調べ期日
  • 2026年11月9日:裁判所が心証を示す予定

つまり、現行版・正式版1.0が差し止められる可能性は事実上なくなりました。海外知財メディアGames Frayは、原告が全面勝訴しても賠償は500万円程度にとどまると分析しています(出典:Game*Spark、2026年6月12日)。

金額でも差止めでも実利は薄い。それでも走り続けているのは、「模倣されたら短期間で権利化して押し返す」という姿勢を業界に示すこと自体に意味がある、と見るべきなのかもしれません。

PatSnap Eurekaを使ってみた所感

ここからはツールの話です。

よかった点

  • 特許番号を投げるだけで、書誌・請求項構成・明細書の補足・法的状態・パテントファミリーまで一括で返ってくる(図1・図2)。J-PlatPatで4画面ぶん見る作業が1問で終わる
  • 請求項19項・24項を「独立項はこれ、従属項はこういう限定」と構造化してくれるので、争点の当たりをつけるのが速い
  • 回答の根拠が全部リンクで出る。特許文献も報道記事も混ぜて提示される

図6:引用データ一覧。特許文献は番号・日付・法的状態つき、報道記事はリンクつきで並ぶ

  • そして回答の末尾に必ず「証拠境界」が付く(図5)。「今回は書誌・請求項・明細書に基づく。先行技術との対比や審査経過の逐次確認は行っていない」と自己申告してくれるのが、AI調査ツールとしてはかなり誠実

注意すべき点

  • 訴訟の経緯など、特許DB外の情報は報道ベースの回答になる。実際、対象特許の番号は解説記事によって食い違いがありました(本記事では複数ソースで確認できた3件を採用)
  • 最終的な権利範囲の判断は、当然ながら明細書原文と包袋の確認が必要。Eurekaも「J-PlatPatでの照会を推奨」と自分で書いてきます

要するに、「調べる」を10倍速にするツールであって、「判断する」を代行するツールではない。この線引きさえ守れば、非常に強力です。

PatSnap Eureka IP Searchingとは

今回使ったのは、PatSnapが提供する特許調査向けAIエージェント Eureka IP Searching です。

  • データ規模:2億800万件超の特許データ、174の国・地域をカバー
  • 3つのエージェント:新規性調査/FTO調査/デザインFTO調査
  • 新規性調査:数週間かかる調査が数分、外部委託比で最大95%のコスト削減
  • FTO調査:侵害リスクの可視化を60〜500倍高速化
  • デザインFTO:製品画像1枚から数分で結果を提示
  • 料金:Basic無料(5,000クレジット/月)/Pro $200・月(20,000〜60,000クレジット)/Enterprise・Custom(API)
  • 世界15,000社以上が利用、クラウド/オンプレミス両対応

無料プランでも今回程度の調査は十分回せます。気になる方はこちらから。

PatSnap | 知財・R&D・創薬向けAI...

まとめ

  • パルワールド訴訟は著作権ではなく特許の争い。争点は捕獲操作と搭乗操作
  • 3件の特許はパルワールド公開後に出願され、分割出願で優先日2021年に遡る。この時系列が最大の論点
  • ポケットペアは先行技術と特許適格性で無効を主張、任天堂は訂正審判で応戦
  • 2026年11月9日、裁判所が心証を示す予定
  • 特許の中身は、AIツールを使えば専門家でなくても十分読み解ける

「AIに聞く」と「一次情報を確認する」を組み合わせれば、ニュースの解像度は一段上がります。次に同種の訴訟が起きたとき、自分で特許番号を叩いて中身を確かめてみてください。見えてくる景色がまったく違います。

参考文献

注記:訴訟対象特許の番号は解説記事により記載に差異があります(第7505854号を挙げる記事も存在)。本記事では複数ソースで確認できた第7493117号・第7528390号・第7545191号を採用しました。訴訟は係属中であり、2026年7月26日時点の情報です。

上村 侑太郎

株式会社LeXi/Vent 代表取締役

化学メーカーでマテリアルズ・インフォマティクスなど機械学習の研究開発に従事後、知的財産部で特許情報分析(IPランドスケープ)を従事。その後現職では、IPランドスケープ専任で知的財産戦略、テクノロジーインテリジェンス、知財人材教育に関する業務を行なっている。同時に副業で個人事業「LeXi/Vent」を設立し、士業・コンサルタントのブランディング支援を行いながら、「知財若手の会」コミュニティを運営。

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