働く人から見た「理想の特許事務所」とは? アンケートから考える、選ばれる事務所の条件

今回GrIPでは、「理想の特許事務所」に関するアンケートを実施しました。

ご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。

特許事務所で働く人は、どのようなことを考えながら職場を選んでいるのでしょうか。

高度な専門知識が求められる知財業界で働く人が、それぞれどのような環境を求めているのかを知りたいと思ったのが、今回のアンケート企画のきっかけです。

本記事では、アンケート結果をもとに、働く人にとっての理想の特許事務所とはどのようなものかを見ていきます。 

目次

アンケートから見えたのは、“成長したい”と“働き方と評価”の両方 

今回のアンケートには、特許事務員、弁理士、特許技術者という知財業界で働く人で、実務経験年数も事務所規模も異なる方々から23件の回答が集まりました。

実務経験年数や事務所規模もさまざまで、件数は多くはないものの、知財業界に求められる専門性の高さや、そこで働く人たちのキャリア意識がうかがえる結果となりました。

転職は、知財業界において、比較的身近な選択肢のようです。

82.6%の人が転職を経験し、78.3%は転職を考えたことがあると答えています。

転職の理由として大きかったのは、「成長の機会を求めて」という回答が38.9%と最も多く知財業界で働く人の多くが、自身の成長に対して意欲を持っていることがうかがえます。

印象的だったのは、転職先を選ぶ際に重視するポイントとして、処遇や評価が挙がっていたことです。
 一方で、実際に知りたい情報として関心が集まっていたのは、評価そのものよりも、業務内容や働き方でした。

この対比はとても興味深く、知財業界で働く人たちが、成長できるかどうかを軸にしながら、実際の職場環境もしっかり見極めていることがわかります。
 処遇や評価に納得できることは大切でありながら、それだけではなく、「どのような案件に関われるのか」「どのような働き方になるのか」といった実務の中身もまた、事務所選びの重要な判断材料になっているようです。

転職は“逃げ”ではなく、“成長の選択肢”になっている

今回のアンケートで「成長できる事務所に必要なこと」を尋ねたところ、 「難しい案件に挑戦する機会があること」「専門性を深められる案件に関われる」という声が多くみられました。

この結果から見えてくるのは、知財業界で働く人たちが求めている成長が、抽象的なものではないということです。
 より難しい案件に関わること、新しい役割に挑戦すること、専門性を深めていけること。
 そうした具体的な経験の積み重ねが、キャリアを前に進める実感につながっているのではないでしょうか。

その意味で、転職は必ずしも職場への不満の表れとは限りません。
 むしろ、自分のキャリアを前に進めるための選択肢として捉えられているといえそうです。

知財業界で働く人たちは、今の環境から離れたいというだけでなく、より難しい案件に挑戦できる場所や、専門性を深められる場所を求めて動いている。
 今回のアンケートからは、そんな姿も浮かび上がってきました。

処遇や評価は重要だが、理想の事務所はそこだけでは決まらない

「成長できる事務所に必要なこと」だけでなく、「良い仕事ができる事務所の環境」についても尋ねたところ、業務上の必要な情報の共有、所員間の連携の取りやすさが挙げられていました。

ただし「良い仕事ができる事務所の環境」を考えるうえで、情報共有や連携に加え、業務量の適正さも重要な要素として見えてきました。

「良い仕事ができる事務所の環境」の質問では上位項目ではなかったものの、「特許事務所で特に不足しやすいこと」として挙がっており、理想の事務所に求める条件というより、実際の現場で課題として感じられやすい要素の一つといえそうです。

どれだけ成長機会があっても、仕事量に無理があれば、挑戦は前向きな経験ではなく負担になりかねません。

知財業界で働く人たちにとって、安心して仕事に向き合えることや、無理なく働き続けられることもまた、事務所を選ぶ上で無視できない視点ということが、「今後、働く事務所に最も求めたいこと」という質問に対して、働きやすいことが最も多く選ばれたことにも繋がるといえます。

今回の結果から見えてくるのは、理想の事務所は、条件だけで選ばれているわけではないということです。
 処遇や評価に納得できること。
 そのうえで、業務内容や働き方が見え、無理なく働けること。
 そうした条件が重なったときに、はじめて「ここで働き続けたい」と思える事務所になるのではないでしょうか。

理想の特許事務所は、挑戦を支える評価と情報共有がある

今回のアンケートでは、

半数以上の人が、今の自身の職場を「成長できる環境」であり「良い仕事ができる環境」だと感じていました。

この結果は、今の職場を「成長できる環境」であり、「良い仕事ができる環境」でもあると感じているからだと思います。

新しい業務に関われること、専門性を高められること、学びの機会があることなど、日々の実務の中で得られる経験の積み重ねがあり、「この事務所で成長できている」という実感につながっているのでしょう。

ただ、成長実感は、挑戦の機会があるだけで生まれるものではありません。
 日々の業務に無理なく向き合え、良い仕事ができる環境があってこそ、挑戦は前向きな経験として積み重なっていきます。
 そして、良い仕事は個人の経験や努力だけで成り立つものでもありません。
 事務所の中で必要な情報が共有され、周囲と連携しながら仕事を進められる環境があってこそ、仕事の質は高まっていきます。

今回のアンケートでも、「良い仕事ができる事務所の環境」 と「特許事務所において特に不足しやすいこと」として情報共有が挙がっており、情報共有と連携の重要性があらためて浮かび上がりました。
 弁理士、特許技術者、事務員と、それぞれに高い専門性が求められる業界だからこそ、個々の力に目が向きやすい面があります。
 しかし実際には、クライアントにより良い成果を返していくためには、必要な情報を所内で共有し、それぞれの立場から連携しながら仕事を進めていくことが欠かせません。

今の職場を成長できる環境だと感じている人たちも、こうした事務所の風土があるからこそ、挑戦を負担ではなく、成長につながる経験として受け止められているのではないでしょうか。
 理想の事務所には、成長の機会だけでなく、それを支える情報共有と連携の仕組みも求められているように思います。

アンケートから見えた、選ばれる特許事務所の条件

理想の事務所のイメージとして、「人が育つ環境がある」「良い仕事ができる体制が整っている」「働き続けやすい」といった回答が集まりました。

 最後の自由コメントの中で印象的だったのは、
「良い事務所には良い所員がいる」という声です。
 制度や仕組みだけでなく、そこで働く人たちのあり方もまた、理想の事務所像を形づくっていることがうかがえます。

今回のアンケートから見えてきたのは、働く人が求めているものが一つではないということでした。
 働きやすさだけでもない。
 挑戦できることだけでもない。
 成長の機会があり、処遇や評価に納得でき、業務内容や働き方が見え、必要な情報が共有されていて、良い仕事ができること。
 そうした条件が重なったときに、はじめて「ここで働きたい」と思える事務所に近づいていくのではないでしょうか。

知財業界で働く人たちは、今の仕事をこなすだけでなく、その先のキャリアまで見据えて職場を選んでいます。
 だからこそ、これからの特許事務所に必要なのは、挑戦の機会を与えることだけではなく、その挑戦を支え、評価し、日々の仕事の質につなげていく視点です。

選ばれる特許事務所とは、成長を本人次第にするのではなく、成長の機会、納得感のある評価、働き続けやすさ、そして良い仕事を支える情報共有まで含めて、環境として整えている事務所なのではないでしょうか。

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