はじめまして。青山城野特許法律事務所の代表弁護士・弁理士の城野祐希と申します。
京都大学工学部を卒業して特許庁に入庁し、7年間特許審査官を務めました。 在職中に予備試験と司法試験に合格し、四大法律事務所に転職。 今は、弁護士・弁理士として特許法律事務所を経営しています。
私の周りのそれなりの数の知財人材が弁護士資格に挑戦しているという状況を踏まえて、今回は、知財人材が弁護士資格に挑戦するというテーマで書かせていただきます。
実は知財人材で予備試験・司法試験に挑戦している方はそれなりにいます
私の勉強期間は4年ちょっとでした。 予備試験に4年、そこから司法試験に1年という内訳ですが、予備試験の4年はかなり本気で勉強した一方、司法試験の1年は直前の数ヶ月しか勉強していませんので、実質的には予備試験までの4年でした。
受験生時代にも知財人材の予備試験受験生と知り合いましたが、予備試験や司法試験に合格したあと「実は自分も予備試験・司法試験の勉強しているんです」と話しかけられることがそれなりにありました。 特許庁の中にもいましたし、外の弁理士の方や企業知財部の方にもいました。 合計10人を超えています。
自分のこれまでの経験からすると「予備試験経由で社会人からでも弁護士に」という予備校の宣伝を聞いて一度検討したことがある、という層まで含めれば、相当な人数になるのではと感じています。
その割に表に情報が出てこない
ただ、その割に情報が表に出てきません。 ここで言う情報とは、理系出身知財人材の予備試験や司法試験の勉強にまつわる情報のことです。
知財人材は理系が多く、周りに法律を勉強してきた人がいない環境から、一人で勉強を始めることになります。 私が勉強を始めた2018年ごろは特にそうで、社会人合格の体験記を探しても、たどってみると法学部の出身だったり法務部にお勤めだったりするものばかりでした。 純粋な理系の社会人がどう戦えばよいのかというお話は、なかなか見つかりませんでした。
ですので、当時の自分が読みたかった話を書かせていただきます。
なぜ司法試験を目指したのか
もともと高校生のときに、文系に進んで弁護士になるか、理系に進んでエンジニアになるかで迷った経緯がありました。 そのうえで、社会人2年目に、司法試験に合格すればキャリアの幅も自分の発言力も変わると感じたこと、さらに父の急死という強烈な体験をし、「明日死ぬかもしれない人生、1日1日を後悔なく生きよう」と思ったこと、また父の急死による経済的困窮からの脱却が急務だったことが重なり、勉強を始めました。 その後勉強を続ける中で、弁護士としてよりクライアントに寄り添いたいと思うようになりました。
ロースクールか、予備試験か
司法試験そのものの合格率は4割ほどありますので、受験資格にさえたどり着ければ、あとは十分に射程に入ります。 問題は、その受験資格をどう取るかです。
社会人が働きながら通える夜間のロースクールは、当時もそうでしたが、最近はさらに数が限られています。 一方の予備試験は、受験資格も年齢制限もなく誰でも受けられる代わりに、合格率は全体で4パーセント前後、社会人に限れば1パーセント程度で、司法試験より難しい試験です。
私の頃は、おすすめできる道としては予備試験の一択でしたが、いまは在学中受験ができるようになりました。 既修者コースで入れば2年目に司法試験を受けられますので、卒業を待たずに決着がつきます。 現在においては、夜間ローに通いながら在学中受験を狙うのは、かなり現実的な選択肢だと思います。 その場合でも、司法試験対策予備校も並行して通ったほうがいいと思います。
3000時間から4000時間
予備試験の社会人合格率は1パーセント程度と狭き門ではあります。 それでも、自分の経験と周りを見てきた感覚では、一定の素養がある方であれば、3000時間で合格の可能性が出てきて、4000時間を確保できれば合格の確度が高くなります。難関試験である弁理士試験を突破されてきた方ならその確度はさらに高くなると感じています。
私は月に100時間弱、年間で1000時間ほど勉強し、3年目で惜しくも不合格、4年目で余裕をもって合格しました。 1日平均3時間を3年から4年、土日に6時間から7時間ずつ確保できれば、平日は1時間強で3年から4年で合格圏内に届きます。 そう考えますと、手が出ない数字ではありません。 修習同期にも社会人合格者の知り合いが20人ほどいますが、だいたい同じような積み上げ方をしています。 ただし東大法学部出身者は除きます(実はかなりの割合でいますが、そこは別枠と考えましょう)。
差がついたのは、答案を人に見てもらったこと
勉強法そのものは、大手の予備校で手堅くやるのが結局は早いと思います。 費用は安くありませんが、社会人にはそこを投資できる強みがあります(私は当時極貧公務員でお金がなく、130万円借金をしてI塾に課金しました)。
インプットについては順調にこなせましたが、論文に大きな壁がありました。 その壁を乗り越えられたのは、書いた答案を合格者や弁護士に見ていただいたことでした。
大事だとは聞いていたものの、見てくださる方が周りにいないまま独学で通し、3年目にあと一歩で落ちてしまいました。 4年目に見ていただくようにして初めて、ここまで詳しく書かなくてよい、規範は丸暗記していなくてもこの程度で足りる、その分をあてはめの事情に割く、という配点の感覚がつかめました。 問題提起と規範をどこまで削ってよいかは、テキストを読んでも予備校に通ってもなかなかわからない部分だと思います。
メンタルと伴走者
平日は通勤電車で講義を音声で聞き、昼休みも問題を解き、帰宅後にカフェへ寄って勉強し閉店まで粘りました。 土日は友人の誘いを断って勉強していました。 それを3年も4年も、結果が出る保証のないまま続けることになります。 予備試験は落ちれば何も残らない試験で、ロースクールのように学歴が残るわけでもありません。当然勉強以外にもさまざまなタスクがあり、メンタル・モチベーション管理はかなり大変でした。
だからこそ、伴走してメンタル・モチベーションを支えてくれるような方がいるかどうかが重要です。 私にも相談にのってくださる方はいましたが、無料でお願いしているとこちらも恐縮してしまい、本音で相談しづらいところもありました。 月にいくらかでもお支払いできるほうが頼みやすいなと当時は思っていました。 そのような経験もあり、そういったサービスを自分でも今後やっていきたいと考えているところです。
資格を取って何が変わったか
知財の権利化だけでなく活用や訴訟への理解も深まり、より深い提案を行えるようになりました。
また、資格の有無で他人からの扱われ方が大きく変わりました。
希少性もあります。 特許庁の審査官出身の弁護士は、私の知る限り10人ほどです。 就職活動では、理系知財人材という希少性もあり、大変ありがたいことに、四大法律事務所すべて、外資系の法律事務所2つ、その他の法律事務所数社の短期インターンに参加する機会をいただき、これらすべての事務所からオファーをいただくことができました。 社会人は一般に法律事務所の就活で不利と言われていますが、理系知財人材の市場価値は高いと思います。 年収も前職の3倍になりました。
挑戦のリスクは実は小さいと思います
ここまで大変だという話ばかり書いてしまいましたが、この挑戦自体のリスクは、実は小さいと思います。
仕事を辞める必要がなく、落ちても知財の仕事は続けられ、勉強した法律の知識はそのまま実務に残ります。 そう考えますと、コストパフォーマンスは悪くありません。 正しい手順を踏んでやりきれば、合格できる試験です。 少しでも挑戦してみたいというお気持ちがあるのでしたら、まずは覗いてみることをお勧めします。 ただし、辛い受験生時代を乗り越えるメンタル・モチベーションの維持が非常に大事になります。 私自身の経験でも周りを見ても、そこが一番大変と感じています。 今まさにお困りの方は、お役に立てるかもしれませんのでお気軽にご連絡ください。
今後も情報発信は続けていきたいと思っていますので、引き続きよろしくお願いします。

青山城野特許法律事務所代表弁護士・弁理士
京都大学工学部卒業後、新卒で経済産業省特許庁に入庁。その後、弁護士に転身し、長島・大野・常松法律事務所を経て特許法律事務所を設立。AI特許や知財に加え、スタートアップ支援にも注力。特許庁や東京都のスタートアップ支援の専門家も務める。
青山城野特許法律事務所
代表弁護士・弁理士 城野祐希
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