2026年7月9日、「図解 研究開発のための知財戦略」著者の玉利氏をお招きし、「知財戦略の立て方」をテーマにしたオンラインセミナーを開催した。事前アンケートに寄せられた参加者の課題をもとにQ&A形式で進行し、社内巻き込みから経営層への説明、生成AIの活用まで、実務に直結する議論が交わされた。本記事ではその内容を振り返る。
配信
セミナーページ
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参加者アンケートから見えた3つの課題
セミナー設計にあたり、参加者15名への事前アンケートを実施した。浮かび上がったのは次の3点である。
- 立案の基本的な進め方——約半数(7名)が希望。未着手〜部分実施の層が全体の87%を占めた
- 経営・事業戦略との接続——課題として最多(5名)。「経営層への説明」と合わせると過半数
- 実践・巻き込み——自由記述では「開発者や他部門をどう動かすか」という組織論の質問が最多だった




この結果を受け、セミナーは書籍の簡単な紹介のあと、35分程度のQ&Aセッションを中心に構成した。理論の解説よりも、玉利氏の実践知を引き出すことに時間を割いた形である。
議論のハイライト
核心は「ビジネスモデルの解像度を上げること」
セミナー全体を貫いた結論はシンプルだった。知財戦略立案の答えは「事業のビジネスモデルをいかに解像度高く可視化し、そこから出てくる知財論点に真摯に答えること」に尽きる—これが玉利氏の一貫したメッセージである。
多くの現場では、出来上がった事業戦略に知財を後付けで結びつけようとして行き詰まる。そうではなく、ビジネスモデルの文脈から知財論点を自然に導出する。順序を逆にしないことが、経営接続の出発点になる。
「知財は大事」と言わない巻き込み方
社内巻き込みについての回答も明快だった。「知財は大事です」と直接訴求するのではなく、相手のKPI・不安・決めたいことに翻訳して提示する。
- 研究開発部門には「技術の顧客価値への紐付け」
- 事業部門には「収益性・競争優位の維持」
- 経営層には「リスク・投資価値・事業成長」
同じ知財の話でも、部門ごとに語る文脈を変える。さらに、研究開発と事業部門の間に横串を通せる仲介役として機能できることが、知財部門ならではの独自価値だという指摘もあった。
経営層への説明は「経営の関心事」から入る
経営層への説明では、出願レベルの細かい話から入るのは無理がある。「競合に押さえられた場合の回避開発コスト」「知財の曖昧さが事業展開に与えるリスク」など、経営の関心事から入るのが定石である。
そして目指すゴールは、個別案件の承認を毎回取り付けることではなく、「方針に沿った出願・権利取得を任せてもらえる信頼状態」を作ること。この視点の転換は、経営層対応に悩む参加者への実践的な回答だった。
成熟事業・生成AI・特許情報分析
その他のトピックからも要点を挙げる。
- 成熟事業での特許減少:収益源である限り安易に削減すべきでない。競争力の視点を「製法・品質管理・データ活用」等にシフトし、ポートフォリオを移行させる
- 生成AIの活用:コンテキスト収集・論点整理・資料の叩き台作成には有効。ただし否定が苦手で課題を綺麗にまとめすぎるため、カオスはカオスとして明示的に残す必要がある
- 特許情報分析:競合分析を先行させると事業の純粋な軸がブレる「毒」になり得る。自社の軸が固まった後、伸ばしたい方向に狙いを定めた情報提供をすることで初めて価値が出る
残された論点
時間の都合で取り上げられなかった質問も複数残った。特に「知財戦略の立案はどこまでやれば完了か」という問いには、明確な線引きは難しく、アジャイルに繰り返す中で「意思決定に必要な材料が揃っているか」を判断基準とする考え方が示されたが、実践的な定義は今後も掘り下げたいテーマである。
まとめ
今回のセミナーの学びを一言に凝縮すれば、「知財から始めるな、事業から始めよ」である。ビジネスモデルの解像度を上げれば知財論点は自然に立ち上がり、相手の関心事に翻訳すれば社内は動く。事前アンケートの3つの課題すべてに、この一本の軸で答えが返ってきたことが印象的だった。
次回のご案内
本セミナーの録画は編集のうえYouTubeで公開予定である。また、再来週には次回セミナーを開催する。詳細は追って告知するので、ぜひご参加いただきたい。
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